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田中こぼれ話

平櫛田中こぼれ話 《3》

今回は田中の若い頃の話をしましょう。

岡山県から彫刻を勉強するため上京した田中は、しばらく現在の台東区にある長安寺というお寺で下宿をしていました。そのお寺に郷里から持ってきた自作の観音像を置いていたところ、美術仲間が見つけて70円で購入してくれました。当時の1円は現在の3,800円くらいに相当すると考えられていますので、かなりの金額です。大きな臨時収入になったことでしょう。

けれども、この話には続きがあります。日本のある美術商がパリで発行した美術カタログを田中がなにげなく読んでいると、なんと、その観音像が「古い仏像」として掲載されていたのです。

おそらくそのようにして売った方が高く売れるので、誰かががこっそり田中が作った仏像を古いものに変えてしまったのでしょう。ほめられた話ではありませんが、田中の仏像は古い仏像と変わらぬ気品を備えていたようです。

それから、別の作品がある展覧会で買い上げとなり、上京してから立て続けに作品が売れた田中は、「東京って、なんて素晴らしいところなのだろう!」と感激しました。

しかし、そんなうまい話は長く続きません。その後作品はまったく作品が売れなくなり、しばらくの間、ひどい貧乏暮らしを体験することになるのです。                                                                             その時のことがよほど身に染みたのでしょう。のちに田中は、若い日を思い出してこんなことを書いています。

「いつも柳の下にどじょうはいません」

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